「そのうちやろう」を1日ひとつかたづける
(かぎ、かぎ、かぎ、パソコンロッカー13番のかぎ……)
共用ロッカーのかぎが入っている引き出しをあけて、おめあての13番をさがす。
9、10、11、12……。
「う、13番、ラベルはげはげ」
共用のかぎには、ひとつひとつキーホルダーがついていて、そこにラベルが貼ってある。
13番のラベルは表面がすっかりはがれて、ほとんど文字が読めない。
いつも気になってはいるんだけれど、それどころじゃない、あとであとで、とほったらかしにしてきた。
(んー、今日なら時間あるし、なおしちゃうか)
こんどは備品用のロッカーをあけて、ハンディタイプのラベルプリンターを取り出す。
電源を入れて、たて書き、文字サイズ小にして、1、3、ばん、変換ボタン、プリントボタン、で、ラベルがびーっとプリントアウトされる。
キーホルダーにへばりついているよれよれのラベルを、爪でぺろんとはがす。
あたらしいテープも台紙からはがして、かぎについたノリのあとにあわせて、ぺたっと。
3分かかっているかどうか、めんどくさがらなければすぐ終わる。
13番の真新しいラベルを見ていたら、となりの12番も、文字こそ読めるけれどだいぶん黄ばんでいるのに気づいた。
(よし、ついでにぜんぶ貼りかえちゃおう)
プリンターの電源を、もう1回入れる。
・・・
片手でつかめないくらいたっぷり、書類をプリントアウト。
お客様へお送りする分は、封筒に入れて切手を貼って、オフィス入口のポストへ。
シナプスでひかえておく分は、穴をあけてファイリング。
月に1度のおおきな仕事がおわった。
あったかいお茶を右手に、ふぃっと一息つく。
あいている左手で、デスクにほうり出された業務マニュアルをぺらぺらめくる。
活字のよこに、歴代担当者の手書きのメモがびっしり書きこまれている。
前の前の担当者がメモして、いまはなくなっている手順もあるし。
あたらしく増えたから書いておかないといけないんだけど、ついついあとまわしにしてる、わたししか知らないルールもあるし。
わたしにしかわからないマニュアルになっちゃってるなとおもいつつ、だれかに引きつぐ予定もないからみてみぬふりをしてきたけど。
ふと、ファイルサーバーにおいてあるオリジナルファイルの方をひらいてみる。
そもそもタイトル、「2010年版」ってなってる。
(システムへのつなぎかた……あ、さっそく古い。
えー、2018年5月現在、ログイン情報はっと……)
手書きのメモと、ついさっきまでの記憶をたよりに、ひとつずつ更新していく。
今度やろう、だとぜったいほうり出すから、今日やっちゃう。
***
文章を書いたら、だれかにチェックしてもらうのがぜったいにいい。
だからわたしも人にチェックをたのんだり、人からたのまれたりすることがちょこちょこある。
今日は1日じゅう人の書いたもののチェックばっかりやって、さすがにぐったり。
脳みそがしびれてる。
新入社員さんのブログ記事に、マーケティング室のリーフレットに。
話の組みたて、文のつくり、文字表現、がっつりみた。
プラス、なんでなおすかも伝えたいから、修正したところほとんどにメモをつけて、書いた人に説明もした。
がりがりメモをつくりながら、おもった。
(なんか、いつもおんなじようなところ、なおしてる気がするなあ)
いま見てるのと、このあいだ見たのと、へんなところいっしょだな、っておもうこと、けっこうある。
具体的に、ここは気をつけてください、これはこうしてくださいってまとめておいたら、新人さんなんかたすかったりしないかな。
(たとえばかんたんなのは、文字のところで)
全角・半角をそろえる、漢数字・算用数字をそろえる、固有名詞の表記ゆれをなおす、句点をわすれない、かっこをとじわすれない……。
だれでもわかるのにけっこう見落とされているところを、とりあえずノートに書いていく。
(あと、文でよくあるやつ)
- ひとつの文に情報をいれすぎている。
- 係り受けの関係がわかりにくい。
- 主語と述語がねじれている。
箇条書きにしてみたけど、このあたりは例文とコメントがないと伝わらないかも。
(あー、そもそも結論がよくわからないとか、すじみちがあやしいってパターンも)
ここはちゃんと準備しないと、うまく説明できそうにない。
ただその元気は、いまちょっとなさそう。
例文をあつめて分析して、も、きびしい。
まっさらなExcelファイルをたちあげた。
数字を全角または半角に統一しているか、英字を全角または半角に統一しているか、とぱちぱち打ちこむ。
とりあえずいちばんシンプルな、文字表現のチェックリストなら、脳みそがしびれていてもつくれそう。
ぜんぶいっぺんにやろうとするとつらくなるから、小さくわけて、ひとつずつかたづけよう。
・・・
みてみぬふりやあとまわしをしないだけの、余裕と元気をもってはたらきたいです。
(この記事は、当社の取り組みを元にしたフィクションです。
登場人物・エピソードはすべて、“まふゆさんの中の人”の創作です)
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まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。