“時間差RAPID開発”ってなに?(後編)
※「“時間差RAPID開発”ってなに?(前編)」はこちら
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海外オフィスとの時差を利用して、1つの仕事を何人かで交代しながら、ノンストップで続ける。
そうすることで開発のスピードアップを目指す、“時間差RAPID開発”。
これをシナプスイノベーションの開発現場に取り入れることはできないか、まずは日本にいるプログラマーさん同士で実験した。
その報告会に記録係として呼ばれたわたしは、実験にかかわったプログラマーさんたちの渋い顔、そして口を開いたとたんの「難しすぎる」という言葉に圧倒されている。
状況がつかめないけれど、とりあえずメモだけとろう。
わたしがペンを握りしめたのと同時に、会議室でしかめつらのプログラマーさん、Web会議システムごしの在宅プログラマーさん、口々に「何が難しいのか」訴えはじめた。
「まず、1つのプログラムを2人で作るだけできついです」
「それぞれが自分の考えだけで開発していくと、めちゃめちゃになっちゃうんですよね」
「だからはじめに役割分担がいります。どっちかがメインで作りかたを考えて、もう1人は手だけ動かす、とか」
「とにかく下準備をしっかりしないとだめです。
設計書もかなり細かいところまで書いていないと使えないし」
「そこまでするって考えたら、普通より時間がかかりますよ」
「時差があるって前提で、電話なし、メールだけでやりとりしたでしょう。
読むのも、相手が作業している時間はだめ。返事もメール。
直接やりとりできないから、情報がぐちゃぐちゃになりそうでした」
「それに、伝えたいことを文章にするって、しゃべるよりずっと時間がかかるんですよね」
怒涛の勢いであふれてくるご意見を、とりもらさないよう書き起こしていく。
やっぱり、実際にやってみた人にしたら、気になることはたくさんあるんだろう。
「24時間ノンストップの開発で、いまよりずっと短い期間で仕事ができる」
なんて口でいうのは簡単だけど、そううまくいくものじゃない。
やってみる、を担当する人は、そりゃ苦労するはずだ。
あたらしいことに挑戦するのは大切なことだけれど、それにはエネルギーも時間もお金もかかるってこと、忘れないようにしないと……。
なんて考えを巡らせているうちに、プログラマーさんたちの訴えはなんとかひと段落した。
すると、さっきまでただ笑顔で聞いていた責任者・守谷さんが、ところで、と話題を変えた。
「ところで、かかった時間は、普通に開発するのとくらべてどうでした?」
会議室のプログラマーさんが、首をかしげながら答える。
「そうですね、だいたい2日なので、初心者が1人で作るのと同じくらいでしょうか」
「質の方は?」
「細かい検証をしないとなんともいえませんけど……。
2人でプログラムをみたので、バグはみつけやすかった、かもしれません」
「なるほど」
守谷さんがほがらかに続ける。
「スピードはとりあえずそのまま。質の面はやり方しだいでプラスになるかもしれない。
課題は多いけど大失敗ともいえない、っていう結果ですね」
さんざん課題の積みあげられた会議を、ポジティブにまとめるこの一言。
思わず笑ってしまった。
当事者のプログラマーさんたちは、わたしほどのんきには受けとめられないらしい。
あくまでもあいまいに、工夫がいりますけどね、とうなずいた。
報告会のあと、席に戻ろうとする守谷さんに声をかけた。
「なかなかたいへんそうですね、“時間差RAPID開発”って」
「いやまあ、初めはこんなもんですよ」
守谷さんはどこまでもおおらかに言葉を続ける。
「実現できるかどうかも含めての検証ですからね。
今回のところは課題を見つけられただけでじゅうぶんです」
たしかに、いきなり成功する挑戦なんてそうはない。
“時間差RAPID開発”の実現を本気で目指すのか、それならいったいどうしたらいいのか、考えるための実験だとおもっているなら、あの会議でもほがらかであたりまえだ。
「だからまふゆさんには、今日のことを率直にまとめてもらって。
読んだ人が、“時間差RAPID開発”について考える機会にしてもらえたらなによりです」
わたしは、握りしめたメモにあらためて目をやった。
必死に書きなぐったので、字がとても汚い。
シナプスイノベーションの挑戦の、失敗も成功も伝えるのがわたしの仕事。
にこにこ顔の守谷さんに、びしっと宣言する。
「それはもちろん!」
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新しいことに挑戦するのは、ほんとうにたいへんです。
“まふゆさん”のコンテンツでは、シナプスイノベーションのチャレンジをどんどんお伝えしていきます。
※次回から、コンパクトサイズの短編にもどります。
(この記事は、当社の取り組みを元にしたフィクションです。
登場人物・エピソードはすべて、“まふゆさんの中の人”の創作です)
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まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。