家でだってはたらける
きょうは、外部のメディアの方がいらっしゃっての取材の日。
シナプスイノベーションのとりくみを記事にするということで、何人かの社員にインタビューしていただくことになっている。
わたしの担当は、その立ち会いだ。
「どうぞ、おかけになってお待ちください」
わたしはライターさんに声をかけ、Web会議システムの準備をはじめた。
パソコンにマイクとカメラ、そして会議室のモニターをつなぎ、角度をいじる。
ライターさんがメガネの奥の目をぱちぱちさせながら、カメラを覗いた。
「なるほど、これは在宅の方との仕事にべんりそうですねえ」
「はい、『Flexible Cost Saver』っていって、うちで提供してるサービスなんですけど。
在宅の方とかほかのオフィスの方、あと遠方のお客さまとの会議なんかにもつかいますね」
モニターのスイッチを入れる。
カメラ目線のライターさんが、右上に映し出された。
これからインタビューしていただくのは、在宅勤務の開発者、細田さんだ。
「在宅勤務制度を利用して、お子さんを育てながらはたらいておられる方とお聞きしましたけれど。
ちなみに、ご自宅はどちらのほうでしょうか?」
「……ご自宅、ですか?」
ライターさんからの質問に、わたしはとっさに答えられない。
言葉につまったとき、モニターの真ん中に、見たことのない女の人のほっそりとした顔が現れた。
「お待たせしました、細田です」
「あっ細田さん! はじめまして!」
メディアの方を差しおいて、大きな声でごあいさつしてしまった。
ちょっとはずかしいけど、引っ込みがつかないのでそのまま続ける。
「えっと細田さん、ちなみになんですけれど、いまいらっしゃるご自宅って、どこですか?」
細田さんは、はじめわたしの突然の質問にとまどったように唇をすぼめた。
ちょっと考えてわかってくれたのだろう、やわらかい笑顔に変わる。
「自宅ですね。滋賀です。
まふゆさん、ご存じないですもんね」
わたしたちのやりとりを、ライターさんはぽかんと聞いていた。
向きなおって、はずかしながらの言いわけをする。
「すみません、事前の確認がたりなくて……。
わたし、細田さんのお顔も知らなかったんです」
わたしと細田さんとの連絡はすべて、かんたんなメールだけですませてきた。
お顔もいらっしゃる場所も、意識したこともなかった。
「そうですね。
わたし、最後に出社したのは2年以上前のことですから」
「へえ、2年も」
ライターさんがふむふむとうなずく。
「それだけ長くご出社されなくても、仕事のできる環境が整っているということですね。
そのあたりから、お伺いさせていただきます」
さすがプロ、うまくつないでくれる。
ほっとして、インタビューに耳をかたむけた。
あれから3日。
細田さんから、記事にそえるための写真が送られてきた。
明るい洋間で私服姿の細田さんがパソコンをさわり、となりでちいさな女の子が絵を描いている。
(そっか。
こんなふうにはたらいてる人だっているんだよね)
まいにち同じオフィスにきて、同じメンバーと顔をあわせる。
そこにいない“シナプスイノベーションの仲間”のことって、考えたこともなかったけれど。
細田さんのはたらく背中を、ちょっとだけ思いうかべた。
・・・
在宅勤務制度は子育てのほか、病気療養などにも利用されています。
かかわる方の苦労や工夫など、“まふゆさん”には見えない部分のことも、また別の形でご紹介できればと思います。
(この記事は、当社の取り組みを元にしたフィクションです。
登場人物・エピソードはすべて、“まふゆさんの中の人”の創作です)
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私たちは、製造業のためのソフトウェア開発会社、シナプスイノベーションです。
基幹システムの導入から、生産・物流等の見える化・自動化までワンストップで提案します。
経営層から現場層まで情報を一気通貫につなげられることが強みです。
まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。