まふゆさんと「他部署のしごと」
きょうは、いつもの席のある管理系部署の部屋をはなれて、開発本部の区画のすみで仕事をしている。
大きな窓のまんまえで、まっさおな空と、通り過ぎていく飛行機がまぶしい。
なぜこの席に座っているかというと、わたしのかかわっている仕事のひとつ、ワークサポーターチームが、最近ここに引っ越したから。
ワークサポーターは、掃除から資料づくり、プログラムのテストまで、シナプスではたらくすべての人のお困りごとに対応する、縁の下の力もちチームだ。
そんなワークサポーターチームのスケジュールやタスク管理もわたしの仕事。
管理用のExcelファイルをぽちぽちやっていると、となりの席にいたワークサポーターチームメンバー・宇都宮さんが、遠慮がちに声をかけてきた。
「まふゆさんすみません。月次レポートのことで相談があるんですけど」
「あっ、そうか。きのう発行されましたもんね」
月次レポートというのはその名のとおり、月にいちど全社に向けて発信されるレポートのこと。
各部署の1ヶ月の活動報告と、全社に必要な情報の連携、そして社長である藤本さんからのメッセージがのっている。
「相談っていうと、わからないところがあるとかですか」
「そうですね、むずかしいところがいくつか」
宇都宮さんがパソコンの画面を指さしてくれるので、横からのぞく。
開かれているのは、藤本さんからのメッセージ記事だ。
「この『影響の輪』って……何回か聞いたことはあるとおもうんですけど、ぴんと来なくて」
「ああ、これだったら、経営計画書に説明がありますよ。えーっと、索引は、と」
経営計画書は、シナプスの大切にしている考え方や仕事のやり方、社内でよく使われる言葉などをまとめた、社員必携のハンドブックだ。
ちゃんと手元にあるので、ぺらぺらっとめくって宇都宮さんに見せる。
「あったあった、『影響の輪』。
コヴィーっていう人の書いた『7つの習慣』っていう本に出てくる言葉ですね。
シナプスは『7つの習慣』の考え方をいろんなところでつかっているので、聞いたことがあるんだとおもいます」
宇都宮さんがふんふんとうなずく。
月次レポートのなかには、シナプスの文化、方針、特別な用語まで、たっぷりとけこんでいる。
だからきちっと理解しようとおもうと、こういうふうに復習しながら読むことになる。
「ありがとうございます、まふゆさん。
それと、各部署のレポートなんですけど。
4月に組織の大きい変更があったじゃないですか。
それで、どこの部署がどんな仕事をしてるのか、よくわからなくなってしまって」
今期のはじめの組織変更は、部署ごとの役割が見直されたり、組織じたいの体系がかわったり、ちょっと複雑だった。
チームのホワイトボードに貼ってある最新の組織図をとって、宇都宮さんに見せる。
「とりあえずざっくり見てみましょうか……」
組織図を指でなぞりながらひとつずつ説明すると、宇都宮さんはメモを取りながら聞いてくれた。
「……なるほど。ちょっとわかるようになりました。
他の部署ってなにをしてるのか、混乱することがあるんです」
「そこを補足してくれるのも、月次レポートの役割ですからね」
まいにち自分の仕事をいっしょうけんめいこなしていると、他の人のようすが見えなくなりがちだ。
それを補ってくれるのが、毎月1度のレポートなんだけど……。
「いっぺんに読むのがたいへんなのは、宇都宮さんだけじゃないですよ」
いちどのレポートに、いろんな情報がつまっている。
いっきに理解しようとするとたいへんなのは、わたしだってわかる。
だからそれぞれの部署で、レポートをつくるとき、もっとかんたんに大切なことを伝えられないか? みんなにいちばん知ってほしいことはなにか? と試行錯誤をする。
どう読むかもどう書くかも、いつでもいくらでも工夫できるし、しないといけないんだろう。
宇都宮さんが、わたしにむかってぺこんと頭を下げる。
「とりあえず読めてきたので、すごいと思ったことと、まだよくわからないことと、感想文に書いてみます」
月次レポートを読んだら、感想を提出することになっている。
意見、質問、相談、報告。内容はいろいろだ。
「それはよかったです。
わたしも自分なりに書いてみます」
そう返事をして、ぐぃーっとひとつ伸びをする。
(じっさい、他の人の仕事って、レポートくらいでしかなかなか見えないもんな……)
いつもの席から離れて開発の区画ではたらくだけでも、1日見えるものが全然ちがう。
(同じ会社ではたらく人の仕事、ちゃんと見ておかないと)
まわりをぐるりと見わたして、ちょっとだけ考える。
・・・
今年度のブログの野望は、いろんな人の仕事をテーマにする、です。
(この記事は、当社の取り組みを元にしたフィクションです。
登場人物・エピソードはすべて、“まふゆさんの中の人”の創作です)
貴社の課題、私たちに相談してください。
私たちは、製造業のためのソフトウェア開発会社、シナプスイノベーションです。
基幹システムの導入から、生産・物流等の見える化・自動化までワンストップで提案します。
経営層から現場層まで情報を一気通貫につなげられることが強みです。
まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。