まふゆさん、テレワークをする
ベランダから表を見下ろすと、向かいの家の玄関に枯葉の山、それからそこに刺さるこわれたビニール傘がみえた。
(一晩じゅうすごい風だったもんなあ)
また突風がふいて、まるいゴミ箱が道路をごろごろころがっていく。
台風は、まだ完全にいってしまったわけではないみたい。
廊下をぬけて自分の部屋にもどり、パソコンを立ち上げる。
電車のダイヤもぐちゃぐちゃらしいし、念のため在宅勤務にしておいてよかった。
シナプスには、在宅勤務の制度がある。
子育てのときや療養のときなど、中から長期でつかう人が多い。
それに対してきょうのわたしは、災害対応のための1日だけのテレワーク。
1日だけとか半日だけ家ではたらきます、という人ももともといたんだけど、社員だれでもというわけじゃない。
そこで、地震台風、そのほか必要なときにすぐテレワークができるよう、各社員実験してみましょう、と声がかかっていたところ。
そういえば7月のテレワーク・デイのときは開発のチームでもトライアルしたらしいけど、あれどうだったんだろう。
今度シナプスの社労士・浅尾さんにきいてみよう……。
というのはおいといて、仕事、はじめます。
ぴろぴろぴろ……と携帯に着信、会社の電話番号だ。
とってみると、後輩の宇都宮さんの声だった。
会社と家が近いから、きょうも出勤しているときいた。
『提案書なんですけど、ちょっと困ってるところがあるので相談させていただきたいです』
「あ、わかりました。じゃあこのままCost Saverつないでもらっていいですか?」
Cost Saverというのはシナプスのあつかっている製品のひとつで、社内でも使っているWeb会議システムのことだ。
「あ、ありがとうございますつながりましたね。
じゃあ次は、宇都宮さんのパソコンの画面を共有してください。
リモート操作も許可してもらえると助かります」
Web会議内の画面共有機能で、宇都宮さんの作業中の画面がみえる。
さらに、こちらからマウスポインタを動かして指示もできるよう、設定してもらう。
「あ、みえましたみえました。えーっとどこが気になってるところですか?」
『この、新システムのイメージ図のところなんですけど……ちょっとごちゃっとして見づらいかなって……』
画面を見ながら電話で話す。
ほんとうはマイクをパソコンにつなぐのが正しい使い方なんだけど、急に決めたテレワークなので、こういう形でやってみている。
このあたり、社内の備品で対応するのか、個人の持ち物をなんとかするのか、なにがいちばんなのかなあ。
なんて思いつつ、Web会議越しに提案書を見せてもらっていろいろと相談できた。
「……ということで、こんな感じでお願いします。
また何かあったときと、このページができたときは連絡してくださいね」
『ありがとうございます、わかりました。
それじゃあ失礼します』
電話とWeb会議を切って、自分の仕事にもどる。
それなりにボリュームのある原稿の作成とチェックだ。
まとまった時間で集中してやりたいと思っていたことだから、家でやるのがちょうどよかったかもしれない。
昼間は家のなかが静かだし、まわりに注意をはらう必要がないし。
(きょうのうちに初稿つくって、できればセルフで内容チェックして、あした出社したときに他の人にみてもらって……)
キーボードをたたく指の動きが、自然となめらかになる。
こういう仕事は、ひとりで集中する時間とみんなでわいわい相談する時間、メリハリをつけられるとすごく楽だ。
ひとりのことは在宅でやって、相談は出社する日に、っていうのもいいし、オフィスの中でも、たとえば集中スペースとわいわいスペースをわけられるといいかも。
ぐーっと作業をしてそろそろ夕方、というとき、また電話が鳴った。宇都宮さんだ。
『提案書、できました。チェックお願いしたいです』
画面に映ったイメージ図をぱっぱっとチェックする。
元々のごちゃごちゃ感がなくなって、すっきり見やすくしあげてくれた。
「いいですね、きれいにしてくださって助かります」
『こちらこそありがとうございます。
意外にうまくやりとりできてよかったです』
宇都宮さんのやさしい声をきいてほっとした。
はじめてのテレワーク、どうかなあと思ったけど、きょうの仕事に限っては問題なく、むしろ集中してできた。
どうしてもオフィスでしかできない仕事もあるから、みんなが毎日っていうのはむずかしいと思う。
でも、交代でとか、週に1度とか、まとめて1ヶ月とか、うまくやれば使い方はいろいろありそう。
宇都宮さんとの電話を終えて、そろそろあしたの準備をはじめる。
スムーズに、次の出社につなげられるように。
ぜんぶきれいに終わったら、せっかくだからきょうは、夜ごはんに何か手間のかかるもの、つくろうかなあ……。
・・・
そもそも自室で集中できる人とできない人がいると思うのですが、わたしは得意な方なので、けっこう快適でした。
(この記事は、当社の取り組みを元にしたフィクションです。
登場人物・エピソードはすべて、“まふゆさんの中の人”の創作です)
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まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。