“下請けから元請けへの変革” 立教大学 学生インタビュー
10月31日、立教大学3年生のYさんが弊社東京オフィスにいらっしゃり、代表の藤本にインタビューをしてくださいました。
Yさんは、SI(システムインテグレーション)業界をテーマに卒業論文を作成されています。
研究活動の一環で、ITpro(日経BP社が運営する、ITに関するメディアサイト)に掲載された、SI業界の実態についての藤本のインタビュー記事をご覧になり、業界の下請け企業だった弊社が元請けとして仕事をするようになった経緯など、詳しく知りたいと思ってくださったそうです。
今回はそのインタビューの内容を一部ご紹介したいと思います。
Yさん:御社は下請け専門の企業から元請けとして仕事をする企業に転身されたということですが、きっかけは何だったんでしょうか?
藤本:1つは、従業員の労働環境を改善しなければならないと思ったことです。
下請け企業というのは、一概には言えませんがいわゆるブラックな体質を持っている場合が多く、しかもその構造からなかなか逃れることができません。
システム開発では、どこかの工程に想定より時間がかかってしまうことは珍しくないのですが、この場合でもお客様への納品期限は変わらないのが当たり前です。そのため、後半の工程を担当することの多い下請けは、前の工程の遅れのしわ寄せをすべて食うことになります。しかもこうしたことはとても多いんです。
似たような課題を抱えているのが建設業界ですので、今いろいろと問題になっているオリンピックを例に考えてもらうと分かりやすいでしょう。プランを立てるときには、ああでもないこうでもないとなかなか話がまとまらなかったり、後からやっぱり変えようという話になったりすることが度々ありますよね。この時点で遅れが出ていたとしても、オリンピック開催日は変わりません。
前工程に時間を取り過ぎ、余裕がなくなっている中で無理やり間に合わせようと頑張って仕事をしている人達には、当然十分な休息をとる時間はありませんよね。働く人たちはいずれそんな環境には耐えられなくなるので、もっといい職場へ行こうと転職してしまいます。そのため下請け企業では人の入れ替わりが激しく、特に優秀な人ほどよその会社に行ってしまうという問題があるんです。
こうした問題に直面して、会社のためにも従業員のためにも労働環境を改善しないといけないと思いました。そのためには、根本的に下請けから脱却する必要があったのです。
それに加え、下請け時代は社員の多くがお客様先の企業に常駐して仕事をしていたので、彼らがどんな仕事をしてもそのノウハウが当社に蓄積されないという問題もありました。これも元請けになろうと思った大きな理由の1つですね。
Yさん:なるほど。元請けになるにあたってどのようなリスクがあったのか、具体的に教えていただけますか?
藤本:そうですね、リスクは大きかったです。
下請け企業は元請けから仕事をもらっているわけですから、下請けから元請けになるということは、もともと仕事を頂いていた会社と競合関係になるということです。当然仕事がなくなるリスクがありました。だから下請けから元請けになろうという企業はあまりないんです。
それに、元請けになったからといって必ず成功できるわけではありません。元請けはリターンも大きいですが、その代わり失敗の責任などのリスクも大きいです。例えば完成したものがお客様に認められなかった時、責任を負うのは元請けです。また下請けの仕事は元請けの方から声がかかるのが普通なので、自分たちで営業を持たないことも多いのですが、元請けになるとそうはいきませんから、その分の費用などもかかってきます。費用をかけたからといって必ず仕事が取れるというわけでもありませんしね。
Yさん:そのリスクを抱えてでも、藤本さんは元請けになることを決断されたのですね。
藤本:そうですね、実際、下請け企業の社長は従業員と違い追い詰められてはいないんです。IT業界は人材不足で、元請けから来る仕事は山ほどあるので、現状に満足していればそれでいいという社長さんがほとんどだと思います。しかし、私は社長の仕事は未来をつくることであって、現状を維持することではないと思っています。元請けに頼った経営は楽だったかもしれませんが、私は自分の社員の身は自分で守りたいんです。それに、何か新しいことをするときにはリスクはつきものですからね。
Yさん:なるほど、リスクよりも社員さんの未来をとられたわけですね。
ですが会社を変革する中で社員さんからの不安、不満の声もあったと思います。どのように組織を変えていかれたのですか?
藤本:そうですね。元請けとして仕事をするようになると、例えば営業のように、今までにない業務も出てきたので、社員からの不満や不安の声はありました。でもそれは自然な事だと思います。
多くの人は環境が変わることに対して不安や不満を抱くので、現状維持を選びます。そのため企業が新しいことをする場合には、新しい人材を入れる必要があります。
そこで、当社の長期的なビジョンにマッチした若い人材を採用、育成しながら、同時に新しい舞台での即戦力になる方も中途採用で迎えました。また既存の社員についても、新しい人材と働いてもらいながら教育をしました。
そうやって集めたいろいろなタイプの人をまとめ、一丸となって同じミッションを目指すために、経営計画書という当社のバイブルを全社員に配っています。この本には当社の基本的な理念から中長期の事業方針まで、社員に知っておいてほしいことをすべてまとめてあります。これを皆で共有することで社員に今後の方向性を浸透させ、少しずつ会社を変えていっているんです。
Yさん:やはり会社を作るうえで人材というのは鍵になるんですね。
藤本:もちろんです。人・もの・金そして情報、すべて大事な経営資源ですので、私は普段から、社員とよくコミュニケーションをとっています。
社員と直接やりとりする勉強会も開いていますし、年始には挨拶の手紙を書いて、グループウェアを通じて社員全員に送ることにしています。過去1年間の振り返りを、昨年の頭に宣言したことの結果報告も含めて書き、さらに今年1年の目標も記載して、1月1日になった瞬間に送っているんですよ(笑)。
Yさん、今回はわざわざ訪ねてくださりありがとうございました。
インタビューのきっかけとなったITproの記事はこちら。
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