働き方改革は、製造業の”原価”にどう影響するか
おはようございます。シナプスイノベーションの中里です。
先日、「働き方改革」に関する記事を読んでいて、ふと、こうした世の中の流れは製造業の原価にどのように影響するのだろう、と思いました。
「時間外労働の法規制」や「非正規と正規の格差是正」に表面的に対応すると、原価が増える
「時間外労働の法規制」により、残業が少なくなる。
単純に考えると、残業代が少なくなるので、労務費全体が圧縮され、原価は減りそうです。
でも、そうかんたんに残業をなくすことができるでしょうか。
「60時間を超える時間外労働にたいしては、50%の割増賃金を支払うこと」というルールがあります。
中小企業では当面猶予されていましたが、いずれは猶予期間が終了することが見込まれています。
もし残業をなくすことができなければ、中小企業の労務費は今以上に増えてしまう事になります。
あくまで、60時間以上残業している場合ですが、どうでしょうか、あなたの会社にはそんなヒト、いませんか?
また、「非正規と正規の格差是正」というテーマもあります。
非正規で働くヒトは労働者全体の40%を占め、彼らの時給は正規雇用労働者の時給換賃金の60%程度といわれています。
格差是正のためにこれを上げていくと、やはり労務費全体が増える事になります。
「時間外労働の法規制」「非正規と正規の格差是正」。
いままでの仕事のやり方をまったく見直さず、こうした動きに表面的に対応しようとすると、労務費がかかるようになって原価が増え、企業の利益は減る、ということになってしまいそうです。
同じ製品を作るのにかかる労務費を抑えるにはどうしたらいいか、考えなければならない
今、多くの製造業が人手不足に悩んでいます。
ヒト手がたりない状況で、期日までにモノを作ろうとすると、当然1人当たりの働く時間が増えます。残業時間が増えます。
ヒトが高いパフォーマンスを出すことのできる時間には限界がありますから、そのうちにシゴトの質が落ちてきます。
残業が増える、シゴトの質が落ちる、ミスが多くなる、やり直しが多くなる、残業が増える、ヒトが辞める、残ったヒトの残業が増える。
残業が増えることで労務費が高くなり、シゴトの質が落ちることでやり直しやロスが増える。原価が高くなる。利益が圧縮される。
賃金を増やせない、ヒトを増やせない……。
労働生産性が高い、低いというどころではない状況です。
悪循環です。
この状況に、「時間外労働の法規制」が加わったとします。
法に従いつつ原価を抑えるために、一律に残業をゼロにすると決めたらどうなるでしょう。
仕事量を、今いるヒトが残業しないでコナセルだけに制限する。労務費は減りますが、できる製品の数も減るので、売上も減る、利益も減る……。
それで、会社が倒産しては本末転倒。
となると、同じ製品を作るのにかかる労務費をもっと抑えるにはどうしたらいいか、考えないといけません。
「職能給」から「職務給」に変えるだけでは労務費は削減できない
労働者の給与体系を「職能給」から「職務給」に変えることで、労務費が削減できるという考え方があります。
平均年齢が高い企業は、低い企業に比べ、一般的に労務費が高いといわれています。
こう考えられる原因のひとつに、「職能給」が挙げられます。
職能給は社員の職務遂行能力に応じて賃金を決定する仕組みです。そして多くの企業で、職務遂行能力は勤続年数に比例して身につくものと見なされています。
すると社員が年を取るほど賃金が上がっていきますから、平均年齢の高い企業は全体の労務費が高くなります。
一方「職務給」は、年齢に関係なく、職務の内容に応じて賃金を決める仕組みです。
職務ごとの賃金の基準をうまく設定すれば、1人のヒトに払う賃金が必然的に年々上がっていく職能給と比べ、全体の労務費を安くできるかもしれません。
基本的には同一労働同一賃金の考えにもとづく制度なので、雇用形態による格差の是正にもつながるかもしれません。
でも、労務費を抑えることをいちばんの目的に給与制度を変更して、働くヒトの能力を本当に評価することができるでしょうか?
ヒトは、自身の能力が評価されないとわかっている状況では、持っている力を発揮しません。
そうなると結局、全体の効率は上がらないままです。
カイシャにとっても、ハタラクヒトにとってもよくありません。
ましてや、お客様にとってはなおさらです。
こうしたやり方は、人手不足と「働き方改革」の流れに直面する企業にとって、本質的な解決策ではありません。
労働生産性を高めるのは、”会社”ではなく”人”である
必要なのは「効率を上げる」、つまり、一定の時間で前よりも多くの結果を出せるようになることだと思います。
効率を上げ、労働生産性が高くなれば、原価は低減され、利益が生まれ、カイシャにとっても、ハタラクヒトにとってもよくなります。
では、仕事の効率を上げるにはどうしたら良いのでしょうか?
色々な説がありますが、1つ大切なのは、効率を上げるために考え、実行するのはカイシャではなく、ハタラクヒトだということです。
カイシャがヒトの働きやすさを考える事はもちろん必要です。
でもそもそも、カイシャは、ヒトの集まりです。
カイシャを働きやすい場所にしようと考え、実行するのは、ヒトです。
ハタラクヒトが、ハタラクヒトのために考え、実行するのです。
何もしないで待っていたら、カイシャという大きなものが勝手に働きやすい場所を提供してくれると期待するのは、どうかと思います。
これから、短い時間で大きな結果を出すことがもっともっと求められるようになるでしょう。
それに応えるためには、周りのヒトがよりよく働くために自分には何ができるかを、ひとりひとりが考えることから始めるべきです。
今日、カイシャに行ったら、少しだけとなりのヒトの事を考えてみてはどうでしょう?
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中里 真仁(なかざと まさひと)
宝塚歌劇をこよなく愛する生産管理&経営管理コンサルタント。
神戸生まれの神戸育ち。海を眺め、山へ登ることが好き。
関心あること、感心したこと、歓心を得た事を綴ります。