役職のきこえない会社

まふゆのシナプス観察日記, 弊社の取り組み

 

「あの、まふゆさん」

ん?
呼びかけられて顔を上げると、かわいい新人くんがちょっと困ったようにわたしを見ている。

(ちょい待ち!)と手で訴えて、お弁当の最後のひと口をのみこむ。
あせって喉に引っかかったので、お茶でむりやり流しこむ。

 

「んぐ……、えー、はい、何でしょう。元倉さん?」
「えっと。この書類、開発のマネージャー以上の人に配っといてくれって、上長から言われたんですけど」

オフィスの使い方か何か、お知らせの書類を、ぺろん、と差し出される。
元倉さんは声をひそめて続けた。

「そもそもマネージャー以上って、どの方ですか?」
「……あ~」

なるほど。
オフィスをぐるりと見回す。

 

うちのオフィス、チームごとの「島」こそあれ、島それぞれの「上司席」みたいなものはいっさい無い。

つまり、誰が偉い人なのかデスクを見てもまったくわからない。
新人さんからベテランさんまで、ただすとんと座って、カチャカチャ仕事している。

「みんな“さん付け”だと、どの人がどんな役職なのかわかんないよね」

元倉さんはうなずく。
シナプスイノベーションでは、わたしが入社したときにはすでに、社員同士がだれも役職で呼び合わない“さん付けルール”というものが定着していた。

入社1年目ぴちぴちの彼は「元倉さん」。
3年目のわたしは「まふゆさん」。
わたしの上長は「川田さん」。
社長であっても、「藤本さん」。

“さん付けルール”のもとでは、誰が誰を呼ぶにもこういうふうになる。

 

「組織図を確認して、もれのないようにしてほしいんですけど……。
今だとちょうど、あのあたりですかね」

オフィスの片隅に、タイミングよくマネージャー陣が集まっている。

「あそこですね!  ありがとうございます」
元倉さんはそろそろと、わたしの指さすほうへ向かった。

 

(わかる~、話に割り込むの、緊張するよね。
わたし、1人でご飯食べてただけだし、話しかけやすかったよね~)

わたしはお弁当をたたみ、読みかけの文庫本を開いた。

「おお、ありがとう、元倉さん」
遠くからマネージャー陣の声も聞こえてきたし、これにて先輩の任務完遂、ということで。

・・・

ちなみに、シナプスイノベーションの“さん付けルール”は、基本的には“名字 + さん”です。
名字が先輩とかぶった場合は、後輩の呼び名が“下の名前 + さん”になります。

わたしは誰とも名字はかぶっていないけれど、
ちょっとめずらしいファーストネームのおかげで、「まふゆさん」と呼ばれています。

そんな例外もありますが、いずれにせよ、シナプスイノベーションのオフィスでは、役職が聞こえてくることはないのです。

(この記事は、当社の取り組みを元にしたフィクションです。
登場人物・エピソードはすべて、“まふゆさんの中の人”の創作です)

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この記事を書いた人

まふゆさん

“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。

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