36協定がないと残業できない

社内掲示板で「36協定」という言葉をはじめて見たシナプスイノベーション社員ナツコさん。

ちょうど近くにいたシナプスイノベーションの社労士 浅尾さんに訊いてみることにしました。

「浅尾さん、今日社内の掲示板に“さんじゅうろく協定”の労働者代表とか、立候補とか書いてあったんですけれど、これってなんですか?
立候補なんて、生徒会長みたいな感じですね。私、また立候補しちゃおうかな~」

「(さんじゅうろく……?)ナツコさん、生徒会されていたんですか?」

「ええ、中学高校と書記を。
打ち合わせと称して図書室の鍵を自由に使えたので夏休みにも入り浸って……、じゃなくて、“さんじゅうろく協定”ってなにか教えてくれませんか?」

「フフフ……、これ、サブロク協定って読むんですよ。
労働基準法の36条に定められているから、という単純なネーミングなんですけれど」

「へぇ~、じゃあ、別に正式な名前があるんですか?」

「“時間外・休日労働に関する協定届”というのが正式名称です。
法律上、従業員は1日8時間、1週40時間を超えて働くことが認められていないのですが、36協定を締結して労働基準監督署に届け出ることで、残業や休日出勤をすることができるようになります」

「へぇ~。じゃあ、これを提出していない会社で残業をした場合は……」

「例え残業代を支払っていたとしても、労基法違反です」

「浅尾さん、鼻息荒くて怖いです」

「監督署の調査が入った場合も、36協定届が提出されていない時点で、労基法の基礎の基礎が守られてない会社だと判断されてしまいます」

「そういう目で厳しくチェックされちゃうんだ」

「全国の社長さん、36協定届の出し方がわからないときこそ、社労士に相談ですよ!
こんなことでブラック企業扱いなんて、馬鹿らしいじゃないですか」

「さりげなく社労士アピールしましたね」

「36協定届はネット上でもモデル書式が出てきますけれど、ちゃんと守れる内容で提出しなければ意味がありません。
突発的なトラブル対応などで、場合によって長時間の残業もあり得る企業さんでしたら、それに合わせた特別条項をつけることもできます。
会社に合わせたカスタマイズが必要ということですね」

「なんかちょっとだけ浅尾さんがカッコよく見えてきた」

「うふふ、そうですか? 美しく見えるほうが嬉しいですが」

「鼻息荒いので、美しくはありません」

「多くの企業が、36協定届の有効期限を1年間としているかと思います。
毎年忘れず締結して届け出るように、担当者は年間スケジュールに入れておいたほうがいいですね」

「なるほど」

・・・

とりあえず、36協定の労働者代表になっても小説を読む時間は増えないことはわかった、ナツコさんでした。