まふゆさんと若手情シス男子
開発本部の区画のすみで、後輩の宇都宮さんが、ノートパソコンを持ち上げて困り顔をしている。
「あれ、どうしたんですか?」
「移動しようとおもって充電器を抜いたら、バッテリーがぜんぜんもたなくて……」
宇都宮さんのパソコンは、充電器が抜かれた身軽な状態。
画面を覗いてみると、電源ぎれのアラートが出ている。
「充電、満タンだったはずなんですけど……」
「あー、そのパソコン古いから、もう限界なのかもしれないですね。
そろそろ交換とかできないか、情シス……じゃない、情報セキュリティ室に相談してきます。
すみませんが、いまは移動も充電器つきでおねがいできますか」
宇都宮さんはうなずき、充電器の線をパソコンにつないだ。
情報セキュリティ室は、社内のインフラやシステム、ハードウェアの担当部署だ。
シナプス全体の情報セキュリティ意識をたかめるため、さいきん「情報システム室」から名前を変えたばかり。
ついでに、またまたの席がえでわたしの定位置ちかくに移動してきたばかり。
席にもどるついでに相談してみよう。
とおもって、管理系スタッフの区画にもどってみたんだけど。
「……いない」
情報セキュリティ室の若手男性スタッフ・百井さんの席、空でした。
きょろきょろしていると、マーケティング室の伊織さんがおしえてくれる。
「なんかいま、無線LANがつながりにくくなってるみたいで。
百井さん出動中です」
「ああ、出動中ならしかたないですね……」
社内のネットワークにトラブルが起きたら飛んでいくのも百井さんの仕事だ。
パソコンの件の緊急度はそっちより低いし、仕方ない。
宇都宮さんには待ってもらうよう声をかけて、ほかの仕事にとりかかることにした。
ひとつふたつ作業を片づけたころ、百井さんが帰ってきた。
「トラブルは落ちついたんですか?」
「ええまあ、なんとか」
目を伏せてわらう百井さん、ややおつかれみたい。
おいそがしいところ申し訳ないんだけど、宇都宮さんのことを相談した。
「……はい、わかりました。
できるだけはやく解決するように手配します」
「突発的なことにいつも対応してもらって、ありがとうございます。
そういえば、こないだテレビ会議が壊れたときも」
「ああ、そんなこともありましたね」
シナプスでは、はなれたオフィスのメンバーと会議をしたり、いっしょにプロジェクトを進めたりするために、テレビ会議をひんぱんに使っている。
そのための設備が、ついこのあいだ壊れてしまった。
情報セキュリティ室の対応でなんとかなったけど、いっときは不便だった。
壊れたのはいろんな理由のつみかさねだろうけど、あっちこっちにおいたり、はこんだり、負荷がかかっていたのかもしれない。
工夫して、もっと大切にあつかうべきなんじゃ?
ということで、この事件のあとすぐ、設備を安全に持ちはこび、設置するための三脚が用意された。
そのあたりの面倒をみてくれたのも、百井さんだった。
「わたし三脚、よかったとおもいます。
設置も楽になったし、そもそも会社の備品はだいじにつかわないとって、ちゃんと考えるきっかけになったかと」
パソコンもテレビ会議システムも、身のまわりにあるものはみんな、会社がお金を出して用意して、だれかがちゃんと面倒をみてはじめて使えるものだ。
とうぜん、自分のもの以上に大事にしないといけないんだけど、あたりまえに使えるうちはついそれを忘れがちになる。
なにかあったときの百井さんの苦労を見ていたら、なんだか反省してきた。
(む。そういえば)
自分のパソコンの横に置いている、水の入った水筒を確認してみる。
ふたが少しゆるんでいた。
片手ですぐに飲めるようにするためのわたしのくせだ。
でも、しっかりふたをしていなかった飲み物が倒れてのパソコン水没は、けっこう重大なトラブルになる。
(くせ、なおそっと……)
水筒をとり、ふたをきゅっと閉めた。
・・・
シナプスでは、席で飲むのはふたができるもの推奨です。
自宅でも、化粧品のふた、調味料のふたなど、ゆるく閉めていたせいでいろんな事故を起こしたことのあるまふゆさん、さいきん気をつけてます。
(この記事は、当社の取り組みを元にしたフィクションです。
登場人物・エピソードはすべて、“まふゆさんの中の人”の創作です)
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まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。