「それって簡単にできるよ」に傷つく人たち
シナプスイノベーション代表取締役の藤本です。
私には、「そんなの簡単や」という口癖があります。
仕事で悩んでいる人を見かけたらこの言葉をかけて、解決のためのアイディアを提案するのです。
この「簡単や」という言葉、人に元気や勇気を与えるものだとばかり思っていたのですが、どうやらそうとも限らないらしいということに最近気付きました。
どうも、「簡単や」と言われることで自尊心が傷つく人もいるらしいのです。
「簡単や」を勇気や元気の源として受け取れる人と、自尊心を傷つけられる人との違いを私なりに解説します。
勇気や元気の源になる人
このタイプの代表的なモデルは私自身です。
私は長年SE(システムエンジニア)という職種を勤めて参りました。
この仕事をしていると、常にお客様の課題、プロジェクト内部の課題、技術的な課題にさらされ続けます。
課題解決そのものが仕事といっても過言ではありません。
課題解決のためには、ITの技術情報のほかに会計をはじめとした幅広い業務知識も求められます。
さらに、仕事には必ず締め切りが付きまといますので、長時間労働になりやすいという特徴もあります。
多忙なSEが、「処理が遅いから何とかしてくれ」とお客様から求められてどうしようかと悩んでいたところに、第三者から「そんなの簡単や」と言われたときのうれしさといったら言葉にできません。
また、特殊なお客様の業務を理解するのに苦しんでいるときに、簡単に理解できる書籍に出会えたときの喜び、さらに納期が迫っているときに、簡単に解決できる方法や知識を保有した人が現れたときの感激など、言い出したらキリがありません。
常に緊急な課題解決にさらされ、タイトな納期を迫られる環境にいる人にとって「簡単や」は、「やっとこの仕事から解放される」とか「ようやく次のタスクに移ることができる」といったポジティブな感情をくれる魔法の言葉なのです。
自尊心を傷つけられる人
私はこのタイプではないので、仮説に基づいてお話します。
そもそも自尊心が高く、人に指図されることが嫌いな人は、誰からどんな風に声をかけられようが腹を立てるものですから、今回の仮説の対象からは除きます。
そういうタイプでもないのに「簡単や」という言葉に傷つけられるのは、日々同じことを繰り返す仕事をしている人なのではないかと私は想像しています。
毎月(日)同じ仕事を行う人は、少しでも生産性があがるように自分自身で創意・工夫を重ねているだろうと推察されます。
そのような方が、長い時間をかけて、工夫を重ねてやっとの思いでたどりついた最適な仕事の手順を、突如として現れた第三者に「簡単や」などと言われたら、自尊心が傷つくのは当たり前の話です。
しかし本来「簡単や」は努力を否定する言葉ではなく、よりよいアイディアを提案する言葉であるはずです。
人は今までやってきたことを変更・中止するように求められると、「こんなに頑張ってきたのに」という感情にしばしば襲われます。
既存事業から撤退しようとすると「これまでの投資はどうするんだ」と抵抗する人がいるのと同じことです。
一般にはよく、サンクコスト(埋没費用)の問題で解説されています。
また自分の携わっていた業務が簡単になることで、「自分の仕事を奪われるのでは」と身構えてしまう人もいます。
イノベーションが起こるのを忌避する人たちと同じです。
「簡単や」でみんなが幸せになるには
こうした人たちを傷つけるのは可能であれば避けたいところですが、だからといってせっかくのアイディアを伝えず、非効率な仕事を続けるのはナンセンスです。
ですからアイディアのある人は、これまでのことを批判しているのではなく、これから先のお互いの時間を大切にするために提案しているんだよ、という態度で話をしてあげるとよいと思います。
こんな時に便利な言葉が、船井総研で使われています。
「過去ALL善」
過去はすべて何かしらの意味があって行われたことだから、そのまま受け入れましょう、その上で過去にとらわれず、未来志向で物事に取り組みましょうという言葉です。
仕事をする上では、小さな手順の変更から大きなイノベーションまで、変化が必要不可欠です。
ただし変化を起こすときには、変化にさらされる人のためにセーフティネットを構築し、安心してもらってから行動する必要があるのだと思います。
どんなによいアイディアも、受け入れられなければ何の価値もありません。
ぜひ、心がけてみてください。
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私たちは、製造業のためのソフトウェア開発会社、シナプスイノベーションです。
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藤本 繁夫
株式会社シナプスイノベーションの社長をしています。
時空を超え、国境を超え、業界の常識を超え、びっくりポン!なアイデアを発信します。