まふゆさんと、ワークサポーターさん奮闘記(後編)
開発のチームからたのまれて、システムの画面づくりのおてつだいをすることになった「ワークサポーターチーム」。(前編はこちら)
はじめてのこのお仕事をスムーズにすすめられるよう、まずはわたしがいちどやってみて、わかったことを手順書にまとめた。
手順書のできたつぎの日、チームのメンバーをうちあわせスペースにあつめた。
ワークサポーターの宇都宮さんのパソコンを大きなモニターにつないで、宇都宮さんには手順書を見つつ、わたしの話をききながら、画面をつくってみてもらう。
ほかのメンバーも、モニターを見ながら同じことをやってみる。
「これでタイトルバーに画面の名前が表示されました。
いまのところ、わかりましたか?」
ワークサポーターさんたちが、それぞれメモをとりはじめる。
今回わたした手順書は、箇条書きのかんたんなもの。
お仕事によっては、画像なんかをつかってきれいなものをつくることもあるけれど、今回はできるだけはやく、実際にやってみてもらうことを優先した。
そのかわり、さいしょはみんなでいっしょにやってみて、わかりにくいところは質問したりメモをつくったりしてもらう。
「すいません」
宇都宮さんのとなりでメモをつくっていた内村さんが、ペンをにぎったまま手をあげる。
「よくわからなかったので、もう1回見せていただいていいですか?」
「それじゃあ、今度は内村さんがやってみましょうか」
モニターと宇都宮さんのパソコンをつないでいたコードを、内村さんのパソコンにつなぎなおす。
ワークサポーターチームではちょっとした、たとえば植木に水をあげるとか、手書きの文字をExcelに書きうつすとかいう仕事でも、いきなり「それじゃあよろしく」とはしないようにしている。
水をあげる植木はこれとこれとこれで、水をくむにはこのうつわを使って、ひとつの鉢にはこのくらいの水をかけて……と、まずはいっしょにやってみる。
そうすることで、おねがいした側とされた側のきもちのずれを防ぐのだ。
2時間くらいかけてひととおりのやりかたをなぞったところで、自分の席にもどってさらに作業をつづけてもらう。
1回やっただけのことはかんたんにわすれてしまうから、できるかぎりすぐ、体にしみつかせるのがいちばんだ。
わたしはみんなのちかくの席にすわって、まったく別の会議の準備をすすめる。
(あー、ここは営業さんにチェックおねがいしとかないとなー……)
考えていたところで、宇都宮さんの手があがる。
「まふゆさんすみません、いまいいですか?」
「あ、はいはい」
「このマークみたいなの、どうやってつくるんですか?」
宇都宮さんが設計書を指さす。
コードを入力する項目のとなりの、ルーペのマーク。検索ボタンだ。
ときどきみかけるボタンだけど、そういえばわたしのつくった画面にはなかった。
「すみません、ちょっと確認してくるんで、ほかのところを進めてもらっていいですか?
あと、この設計書コピーさせてもらいますね」
わからないことはできるだけはやく解決しにいくのもわたしの仕事。
そのあいだにワークサポーターさんの手がとまることがないよう、確認しなくてもできることをやってもらうようにおねがいする。
「わかりました、おねがいします」
宇都宮さんがぺこんと頭をさげる。
わたしはコピーした設計書をもって、このお仕事を依頼してくれたプログラマーの高原さんのところへむかう。
(高原さん……よかった、いたいた)
「高原さん、おいそがしいところすみません。いますこしよろしいですか?」
「だいじょうぶですよ、なんでしょう」
「いただいていた画面の作成、この、検索ボタンをつくるところでストップしちゃいまして」
設計書のルーペマークをとんとん、と指でたたきながら説明する。
「なるほど。これ、ふつうにボタンでいいんですけど、ちょっと設定がいるんです。
これをこう……」
高原さんがちょいちょいっと手を動かすと、あっというまにボタンができあがる。
「このやりかた、メールにまとめてすぐ送りますね」
「ありがとうございます、たすかります」
わからないことをわからないまま抱えていると、どんどんたいへんなことになってしまう。
だからワークサポーターさんたちには、こまったらすぐ相談してもらう。
そのうえで、わたしでわかることなら答える、わからないならだれがわかるか考えてその人に声をかける。
どうやったらワークサポーターさんたちができるようになるか、できないならだれが引きとるか……と話しあって、きちんとお仕事がすすむようにするのだ。
宇都宮さんのところにもどって、高原さんからのメールをひらいてもらう。
「そうそう、このとおりに設定して……」
書いてあるとおりにボタンをつくって、テスト実行。
「わ、できました!」
画面に映ったルーペマークをみて、宇都宮さんがにっこりわらった。
……と、いろいろあって完成した「受注一覧画面」。
はじめのうちは何度も手がとまったけれど、そのたびなんとかする方法をみつけて、こまっていた本人だけじゃなくメンバーみんなにつたえた。
そのうちだんだん黙々とすすむようになって、わたしはとなりで別の仕事をかたづけられた。
「宇都宮さん、中身チェックしました。OKです!」
宇都宮さんがうれしそうに拍手する。
むかいで仕事をしていた内村さんと、わたしも拍手する。
でもこれはたくさん頼まれたうちのたった1画面。
拍手がやんだあと、わたしはあたらしい設計書を宇都宮さんに差し出した。
「じゃあ、こんどは出荷一覧いきましょう」
・・・
ワークサポーターチームが画面のたたきをつくっているあいだに、高原さんは高原さんにしかできない仕事をすすめます。
宇都宮さんや内村さんがすっかりなれて、質問の手があがらなくなったら、わたしも原稿を書いたり資料をつくったり、じっくりやりたい仕事にとりかかります。
(この記事は、当社の取り組みを元にしたフィクションです。
登場人物・エピソードはすべて、“まふゆさんの中の人”の創作です)
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まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。