企業のサスティナビリティーに必要な原価管理

カイゼンコンサルタントのKANSINノート, 製造業

 

シナプスイノベーションの中里です。

近年、経営において、コーポレート・サスティナビリティーという考え方が重要視されるようになりました。
自社をとりまく環境や社会と共に持続していけるよう考えて経営をするということです。

こう聞くとまずは、環境・社会のニーズを機会と捉え、新たなビジネスにすることで、収益を上げることを思いつくでしょう。
でも、それだけではありません。
他にも、例えば環境破壊を防ぐため、ものづくりのムダを省くことで廃棄を減らします。
すると、ムダなものの保有や廃棄にかかるコストが下がります。

働くヒトのために、「働き方改革」を進めます。

自社へのヒトのエンゲージメントが高まり、熱心に働き続けてくれるようになります。
優秀なヒトが集まりやすくなります。

目先にある自社の利益だけを求めるより、環境や社会への貢献まで考えて経営をする方が、結局多くの利益を得ることができ、中長期的な持続性が高まると、コーポレート・サスティナビリティーの視点では考えます。

 企業が持続するための「利益」は、簡単に算出できない

「利益」というコトバを使いました。

企業が持続するためには、これを得ることが必須条件です。

利益とは、簡単に言えば、売上-原価で求められるものです。
売上は、誰が見てもわかりますね。
では、原価も誰が見てもわかるでしょうか?

原料を200円で仕入れて、εという製品を作り、300円で売ります。
売上が300円なのは誰でもわかりますね。

では、原価はいくらでしょうか。
原料の仕入にかかった200円が原価? 差額の100円が利益? 本当にそうでしょうか?

モノを作るためには、ヒトが働いています。機械も使われています。
できたモノを売るために、営業をするヒトもいます。

作ったり売ったりするヒトのために、管理業務をするヒトもいます。
このヒトたちの仕事にも、機械の稼働にも、お金がかかります。
そのうちどれだけが、εの原価になるのでしょうか?

すぐには分かりませんね。

原料以外の費用をεの原価と認識するには、配賦等の原価計算上の手続きが必要です。
もし、この手続きを経て算出された、原料以外でεにかかる費用が100円だったとするとどうでしょう。

利益はなくなってしまいます。

これでは、企業は持続できません。

原価管理によって企業の持続性は高まる

利益を出すためには、売上を上げるか原価を下げるかしかありません。

売上を上げる、つまり売価を上げれば利益は出ます。
ただし、それでも買ってもらえるならです。
買うかどうか決めるのはお客様です。自社では決められません。 

でも、原価は自社で決められます。
原価を下げる取り組みを行うことで、利益を確保することができます。

それが原価管理です。

原価管理では、まず目標となる原価、つまり標準原価を決めます。
次に、実際に発生した原価をはかります。
目標と実際とのズレがどれくらいあるかを認識して、その差を埋める活動をします。
同時に、目標となる標準原価が適切なのか、見直しも行います。

これを繰り返していくわけです。PDCAですね。

原価を下げることで利益を確保できれば、企業の持続性は高まります。

原価管理のジレンマ

原価管理を行うためには、ヒトや機械について、単純に1人あたり、1台あたりいくらかかかっているのかが計算できるだけでは足りません。

例えば、製造現場にいるヒトが、1日にいくつかの製品の製造に関わっていたとします。
各製品にかかった、そのヒトの費用はいくらでしょうか?
ヒトが作業日報に、それぞれの製品に何分ずつ関わったのかを正確に記載しないと、各製品の正確な原価は計算できません。

しかし、実際には、ヒトが正確な記録をするのは簡単な事ではありません。
原価を細かく把握したいからと詳細な記録を現場のヒトに求めても、記録することに余分な労力がかかるとなると、無理があるでしょう。
かといって、適当な割合で費用を製品ごとに振り分けても、信ぴょう性のない数字にしかならないですね。

そもそも、原価低減の目標となる標準原価、これもどうやって決めるのでしょうか。

もしもこの目標となる原価が適切でないならば、実際にかかった原価をどれだけ正確に集めたとしても、その差額は意味のあるものにはなりません。


実際に、お客様が問題としてよく挙げておられるのは、

・正確な原価が見えない。

・標準原価は何年も前に誰かが決めたもので、根拠が分からない。

・営業が正確な原価を把握できてないので、経験と勘で利益率を決めている。

といったことです。

 原価管理は、小さく始めて手応えを得ることが大切

では、どうすればいいのでしょうか?

最初から欲張らないことが大切です。

 いきなり複雑な配賦基準を決めたり、従業員に詳細な記録の入力を求めたりして、全ての品目の原価を細かく管理しようとしても、うまくは行きません。

まずは重要な品目などから始めてみてはどうでしょうか?

負担になりすぎない範囲で記録を始めて、目標と実際の差異を分析する際には、現場のヒトにも参加してもらう。
なぜ差異ができたのかを一緒に考え、カイゼンするにはどうすればよいか、カイゼンしたらどうなるのかを共有する。
そうすれば、現場のモチベーションアップにつながり、記録の信ぴょう性が増してゆきます。

記録の信ぴょう性が増すということは、実際の原価の信ぴょう性が増すという事です。

実際の原価の信ぴょう性が担保できれば、目標となる標準原価との差異が、現場の問題によるものなのか、そもそも標準原価の設定に問題があって起きているのかが明確になります。

適切な目標設定と、信ぴょう性のある実際原価により、その差をカイゼンする取り組みも手応えのあるものとなります。

このようにして、記録すること、分析すること、カイゼンすることの意義が理解されれば、取り組みをより大きく広げて行けるようになります。
企業全体でPDCAを適切に回し、カイゼンによって利益を上げられるようになります。
結果として、企業のサスティナビリティー、つまり持続性が上がります。

原価管理が「環境と社会全体の持続性向上」につながる

持続性を更に向上するために、新しいカイゼンを考えます。
次は自社をとりまく世界にも目を向けてみます。

環境破壊を防ぐために、ものづくりでの廃棄を減らす。
働くヒトのために、よりよい職場を作る。
それは自社の利益と相反するものではなく、むしろ利益を生むものだと気づきます。

いつの間にか、環境と社会全体の持続性向上につながってゆくのです。

当社製品である「J WALD(ジェイバルト)」は、原価管理をサポートするソフトウェアでもあります。

原価を、始めは大まかなくくりで集計し、段階的に細かく分析することができる。
経費の配賦結果、標準と実際の原価差額などを、ビジュアルなイメージで俯瞰でき、問題点が素早く見つかる。
例えばこんな機能があれば、お客様の原価管理に役立つのではないか?

いろいろなアイディアを取り入れて設計しています。

お客様と、それをとりまく世界と、共に成長し続けるために、J WALDの原価管理は進化してゆきます。

製造業向け生産管理システム「J WALD」
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私たちは、製造業のためのソフトウェア開発会社、シナプスイノベーションです。
基幹システムの導入から、生産・物流等の見える化・自動化までワンストップで提案します。
経営層から現場層まで情報を一気通貫につなげられることが強みです。

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中里
この記事を書いた人

中里 真仁(なかざと まさひと)

宝塚歌劇をこよなく愛する生産管理&経営管理コンサルタント。
神戸生まれの神戸育ち。海を眺め、山へ登ることが好き。
関心あること、感心したこと、歓心を得た事を綴ります。

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