テレワーク時代の情報共有は1.75倍速で進む
『そうしたら、細かい手順はこちらの動画で確認いただけますか?』
ディスプレイの右下に、ビジネスチャットの通知がぽーんと浮かぶ。
続けて、ファイルがアップされましたよ、ともうひとつぽーん。
メインの仕事のあいまに、ちょっとしたデータ登録をお手伝いするっていう話を進めていたところだ。
その件の「細かい手順」ってことだろう。
(来たなー、うわさの動画)
頭の上でちょっとずれていたヘッドセットを、耳にぴったりの位置までもどす。
ビジネスチャットの画面を開いて、ど真ん中の再生マークを押す。
『それではただいまから、データ入力の手順を説明いたします。
まず、ログイン画面を立ち上げます』
低くてやわらかい声が、ヘッドフォンから流れはじめる。
テレワークメインにかわったのと同じくらいのころ、この「動画の活用」っていうやつを、社内で聞くようになった。
要は、指示や報告は動画でやりましょう、勉強会も動画をのこしておきましょう。
聞く人と話す人の時間をあわせなくてもよくなります。
わからないところはくり返しチェックできますよね。
という話だ。
なんだけど、わたし、動画コンテンツにどうも慣れない。
ネットでニュースをクリックして映像がながれはじめると、めんどうになって閉じる。
レシピも、よっぽど複雑なうごきでもないなら、文章の方がとっつきやすく感じてしまう。
社内でやっているのは、文章から動画への置きかえじゃなく生トークから動画への置きかえなんだから、どう考えてもそんなこと関係ないんだけれど、どうも「動画」と聞くだけでちょっと身がまえてしまう。
(頭に入ってくるペースを、自分でコントロールできないのがきついんだよね)
ということで、わたしは「動画活用」をそーっと遠巻きにしてきた。
でも、送られてきたものはしかたない。世の流れにはさからえない。
聞く人話す人のスケジュールあわせがいらないのはたしかにメリットだし。
『メニュー画面右上のタブから、全体設定を選んでいただき』
動画がていねいに説明してくれる前に、わたしはその、メニュー画面右上のタブから全体設定、を終えていた。
なぜならそこまでの手順は知っていたから、知っていたのに、動画を飛ばさずみていたから。
『上から2番目の、ここにですね……』
画面の中でマウスカーソルが動くのを、とりあえず見守る。
(読む方が楽ではやいんだよなーと思ってしまう……)
ふと、社長の藤本さんが、「1.5倍速」とよく言っているのを思い出した。
がっちりマンデー!! を録画して1.5倍速で見ましょう。
カンブリア宮殿を録画して1.5倍速で見ましょう。
「動画活用」が出てきたときも、「動画やったら早送りで聞けるやろ」。
とりあえず再生ソフトの歯車マークを押してみたら、”Playback speed : normal”とのこと。
”normal”を”1.5”に変えてみる。
ゆっくりおっとりしていた声が、ちょっと高く早口に、でも問題なく聞き取れるくらいのペースになって話し出す。
1.75倍でいけるかも。切り替えてみる。問題なし。
こうすれば、10分の動画をみるのに10分かかることはなくなる。
あたりまえだ。ぜんぜん気づかなかった。
倍速再生のイメージが、ビデオテープの早送りで止まっていた。
「動画は忙しい人にいい」「すばやく理解できる」と言っている人たちの意図がいまわかった。
たぶんみんな、勉強会の動画なんか、こうやって見ているにちがいない。
(あたまカタいんだよなー、わたし……)
・・・
もともと、
はさみが欠けた→
×買いかえる。
○気合で切る。そのうちコツをつかむ。
ドアの建て付けが悪い→
×修理を呼ぶ。
○絶妙な力かげんで開閉するワザを身につける。
というタイプです。行動のリズムを変えるのがへたくそです。
仕事中は意識して、「工夫しよう」「改善しよう」「根本解決しよう」を頭においています。
再生速度の調整をおぼえてから、ネットでレシピ動画を見るのがちょっと楽になりました。
ただ、文字を追うのがきもちいいタイプなのは変わらないので、外出自粛とセットで読書時間が伸びています。
予定していたイベントが中止になった分、浮いたお金で、手元においておきたかった本を何冊か買いました。
それと、岩波の本を思いつくまま集めています。学生に戻ったみたいでたのしいです。
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まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。