まふゆさん、2020年を振り返る
冬至までひと月を切って、まだ18時前なのに夜の空だ。
買い物がえり、何日か分の食べものを詰めた袋をぶらぶらさせて歩く。
(あ、月)
アパートひとつとおり越したら、満月にあとひとつ足りない月が、視界にぽんとあらわれた。
そういえば、最近空、みてなかったな。立ち止まって、ぐるりと見まわす。
(あ、星。飛行機じゃなくて星)
明るい星がひとつ、月からすこしだけはなれて光っていた。
背の高い建物が多くて、夜もそれなりに明るいこの町で、ふとしたときに星を見つけるのは、けっこうめずらしい。
*
『しかし、中小企業白書2016 によると、日本の中小企業では、EDIを利用している割合は2013時点で約55%です。』
Googleの検索窓に「中小企業白書2016」と入れて検索ボタンを押す。
もちろんすぐに、中小企業庁のページがヒットする。
もちろんもちろん、『中小企業白書(2016年版)』の全文がPDFで公開されているので、ひらく。
「EDI」の1ワードで検索してみつかるかな?……あった、コラム2-2-1の図表②。「規模別に見た EDI の利用状況」。
グラフによれば、2013年の経済産業省「情報処理実態調査」において、「EDIを利用している」とこたえた中小企業は全体の55.1パーセント。
何をしているのかというと、次のシナプス社員ブログ、『なにをするの?販売管理って(仮)』の、原稿チェックだ。
シナプスイノベーションの社員ブログは、2016年に始まって、4年半以上つづいている。
いろんな社員がいろんなテーマで記事を書いている。わたしもときどき書いている。
そして、わたしはわたしの記事を書くだけじゃなくて、他の人の記事のおてつだいもさせてもらっている。
小さいところだと、誤字脱字のチェック。わたしの記事も含めて、ちょこちょこある。
それから、入社1、2年目の後輩が記事をつくるときなんかは、こういう構成の方がわかりやすいかも、とか、ここの表現はこうした方が丁寧かも、とか、文章全体のアドバイスをさせてもらうこともある。
いまやっていたのは、事実確認というやつ。
中小企業白書2016というものにこれこれこう書いてありますよ、と記事にあったので、ほんとに書いてあるよねというのを確認していた。
けっして記事を書いたひとを信用していないわけではない。
会社として確実に正確なものを発表するための手続きだ。
2020年6月31日って書いてあるけど、6月に31日はありませんよ。みたいなこと、たまにある。
さて、お目当てのグラフがあったのは、中小企業におけるITの利用状況についてとりまとめた箇所のうち、EDIの活用について、のコラムの中。
(んー、グラフの意図はこのコラムだけで説明されてそう。前後の章を読む必要は、いまはいったんなしか。
あと一応、本文中の「中小企業」の定義と、2013年の「情報処理実態調査」の結果にあたっておけばまあ、ここはだいじょうぶかな)
この記事を書いたのは、製造業のITにくわしい大ベテランの社員だ。
他にも、法務担当が書いた法務ブログとか、社労士が書いた人事労務ブログとか、ほとんどの記事は、何かにくわしい人がくわしいことについて書いたもの。
だから、基本的に、チェック係のわたしの方が、書かれていることについての知識が浅い。
だから、正しさをチェックするには、チェックポイントを見抜けるだけの知識を身につけること、チェックポイントを見つけたら、きちんと調べること、もちろん、調べたことを理解できるだけの知識を身につけること、ぜんぶ求められる。
「中小企業白書2016 によると、日本の中小企業では、EDIを利用している割合は2013時点で約55%」ということを確認するだけなら、コラム2-2-1の図表②を見つけただけでじゅうぶん。
でもじゃあ、このデータはもともとなんのために、どうやって集められたんだろう?
ここでいう「中小企業」と「大企業」の定義は? 法律に則ったもの?
そもそも中小企業白書って、なに?
ひとつの情報を「わかった」まで落とし込むには、そのうしろにある膨大なものごとにふれて、自分の中に吸い込んでいかないといけないとおもう。
……んだけど、実際問題、きめられた仕事の時間のなかで、気になることをぜんぶ、心ゆくまで調べるというわけにもいかないので……。
(おっけー、えっと、『EDIはElectronic Data Interchangeの略で』……うん、スペルあってる……)
必要最小限の確認がとれたら、つぎの仕事つぎの仕事とすすんでいく。いまは。
*
子どものころ、放課後に、プラネタリウムに行くのがすきだった。
ふかふかの椅子にからだを伸ばして、どこまでも広がっているとしか思えない、ほんものみたいな星空をながめた。
そうしているうちに、たくさんのことを知った。
ずっと昔の人たちが、星空を人や神さまに見たてて描いた話のこととか。
どこか遠くで、星が生まれては死んでいくしくみのこととか。
家に帰って星の図鑑を読んだ。宇宙のふしぎを教えてくれるテレビもたくさんあった。
いろんな国の神話を読んだ。古代の哲学に興味をもったこともある。
大きくなって、そのころ使われていたことばをほんのちょっとだけ勉強してみたりもした。
何かひとつのことを知ったときに、じゃあこっちは? これは? と、気持ちの向くまま調べるのはたのしい。
たのしいので、たとえばおひる休憩のおともに、中小企業白書をさいしょから読んでみたりする。2020年版がありました。
2017年の民法改正ってなに? と調べてみたりする。これはシナプス社員ブログ「DX対応・民法改正で変わる情報システム取引に関する契約①」より。
オフィスに出た日は、マガジンラックにおいてある、製造業向けの雑誌なんか読んでみる。
雑誌ってほんとにおもしろい。
体系だてた勉強ではないし、いますぐ役に立つ学習でもない。
ないんだけれど、仕事でぐうぜん触れただけのことが、いつの間にかわたしの生活をほんの少しぶあつくしてくれているようで、気持ちいい。
知っていることがふえると、見えるものも少しふえたりするし。
たとえば、あのころ星がすきだった気持ちが、今夜、空に星をみつけたりとか。
・・・
新型コロナウイルス感染症とつきあいつづける日々のなか、今年も年末年始がやってきます。
どうぞ皆さますこやかに、よいお年をお迎えください。
わたしはクリスマスから三が日まで、家でおいしいものをたくさんたべる予定です。
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私たちは、製造業のためのソフトウェア開発会社、シナプスイノベーションです。
基幹システムの導入から、生産・物流等の見える化・自動化までワンストップで提案します。
経営層から現場層まで情報を一気通貫につなげられることが強みです。
まふゆさん
“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。