なんだか上手くいかないIoTの取組み(2)
シナプスイノベーション IoT事業部のマルオです。
前回のブログ「なんだか上手くいかないIoTの取組み(1)」では、私たちの生活の中に「IoT:Internet of things = モノのインターネット」が入り込んできている一方で、私たちシナプスイノベーションのお客様である製造業様の「IoT」は、なかなか上手く行っていないケースが多いのでは? というお話をしました。
今回は、なぜ上手く行かないのかを考察していく第2回です。
まず、「IoT」を支えるコンピュータシステムに着目し、背景的なことから「どうして上手くいかないのだろう?」を考察してみたいと思います。
「IoT」は、異なる2つの「システム」をつなげるもの
多くの人は、「システム」という言葉からコンピュータシステムを連想することが多いと思いますが、「システム」として作り上げられた事柄は、何もコンピュータだけで構成されている訳ではありません。そこに関わる人の動きや仕組みも含めて「システム」と呼ばれます。
しかしこのブログでは、以下、「システム = コンピュータシステム」という意味で使っていきます。
「システム」は、複数のハードウェアとソフトウェアを組合せて形作られます。うち、製造業が導入している「システム」には、事務系の「システム」と製造系の「システム」の大きく2種類が存在すると一般に捉えられています。事務系=Office Automation(OA)、製造系=Factory Automation(FA)と呼ばれます。
OAは、会計、人事、販売などから、注文を現場に伝えるための伝票を発行する部分まで含め、いわゆる事務処理をするための「システム」を一括りに指します。一方FAは、生産設備を制御したり監視したりするための「システム」を一括りに捉えたものです。
これらの2種類の「システム」は、高度経済成長期から現在まで、とにかく生産性を上げることを目指して、人の作業を可能な限り自動化するように進化してきました。
この過程で、OAとFA、それぞれのメーカが、それぞれの製品群を作り出し、それぞれの市場を形成し、そして、それぞれの文化と言えるものまでを形成しました。つまり、OA/FAはそれぞれが独自の進化の道を歩んできたと私は捉えています。
実は、「IoT」という言葉で表現されている事柄には、これまでOAに括られてきたものと、FAに括られてきたものと、両方の要素が含まれています。「IoT」は、もともと別々の文化を持っている2つの「システム」を繋げちゃって、都合よく使っちゃおう、そういうものなんです。そう考えると、単純に、なんだか難しそうに感じるのが普通の感性ではないでしょうか。
OA + FA 一筋縄でいかない「IoT」
私が子供のころ、「元祖天才バカボン」というアニメがあり、その中に「ウナギイヌ」というキャラクターがいました。
「ウナギイヌ」はイヌを父に、ウナギを母に持ち、愛の結晶として生まれたというキャラクターです。
イヌとウナギ、どちらも生物としてDNAを構成物に持っているので、原理的には同じという括りで物事を見ることも不可能ではないですよね。
しかし、イヌは陸上で暮らす哺乳類、ウナギは水中で暮らす魚類、多くの場合、哺乳類は胎生、魚類は卵生です。
このように著しく異なる生物の間に「ウナギイヌ」が誕生するのは、現代のバイオテクノロジーであれば可能なのかもしれませんが、極めて困難で、「原理的に同じ括りだから可能」というのはあまりにも乱暴な論理であると、恐らくほとんどの人が感じると思います。
OAはサーバ室やオフィスに設置されていて、その「システム」は人の仕事を支援するものです。FAは生産現場や電気室に設置されていて、「システム」は生産設備に仕事をさせるものです。
OAは人の仕事を支援することを前提にしていて、人がイラっとしない程度の時間で処理(応答)できればよく、入力する画面も表示される画面も人が使いやすいように作られていることが「ヨシ」とされます。
一方のFAは、生産設備に仕事をさせるために使うことが前提です。ということは、生産設備が動作できる限界の速度まで処理速度(タクト)を高める必要があります。
生産設備に迅速に指示=送信でき、指示した動作がどうなったのかを可能な限り速く検知=受信でき、迅速に繰り返し動作するかもしくは次の動作に移ることができることを「ヨシ」とされます。さらに、生産中に発生する物理現象を漏らさず情報として記録すること(トレサビ)も求められます。
OAとFAが違った方向を向いて発展してきたことをご理解いただけるでしょうか。OAは如何に人とコンピュータが上手く対話でき、如何に人がストレスなく使えるかを目指して、FAは如何にコンピュータと設備が迅速、正確、柔軟に通信でき、如何に設備がより多くの製品を生み出せるかを目指して、それぞれ発展してきたわけです。
「コンピュータ」=DNA、OA=イヌ、FA=ウナギ、このように置き換えて考えてみましょう。
コンピュータを使う「システム」だからOAとFAは原理的には同じ括りだ、だからOAとFAを繋ぐこともできるのだ、と考えることはできますが、実際には、それぞれ全く違う方向を向いているモノどうしを「IoT」という1つの方向に向けようとしていることになります。一筋縄ではいかなくて当然ですよね。
人を支援するOA、設備を制御するFA
もう少し、事務系、製造系の「システム」について深堀してみます。
事務系システム(OA)を構成するのは、かつては汎用機/端末、現在はサーバ/クライアントが一般的だと思います。
かつて、汎用機は計算機とも呼ばれていて、電機メーカがそれぞれ独自の計算機を開発し、独自のオペレーティングシステムを搭載していました。
各メーカ専用のモニタ、キーボードが専用線で計算機に直結され、接続可能な端末台数にも制限がありました。
計算機のソフトウェアの多くは事務処理に適したプログラミング言語で開発され、如何に効率よく、かつ計算機のシステムリソースの利用を最小限に抑えながら、必要とされている機能を実現するかを検討し、設計されていました。
「システム」は個々の注文元に応じてオーダメードで開発されることが普通でした。
現在では、サーバ/クライアントともに、オペレーティングシステムとしてWindowsが搭載されることが多いです。
汎用品のハードウェア、事務処理を支援するための様々なパッケージソフトウェアが市場に多数あり、ユーザはハードウェアを、規模や目的に応じてメーカや機種を検討して選択し、パッケージソフトウェアを業務に必要な機能を検討して選択することで、ほぼ事務処理の大枠を作り上げられ、かつてよりも格段かつ容易に、システム化を実現することが可能となりました。
一方の製造系システム(FA)は、かつてはコントローラ+リレー盤の形で構成され、特撮ヒーロー物の正義の味方の基地のように、ランプがピコピコ光り、レバーやボタンを操作することで設備を動作させていました。
電機メーカがそれぞれ独自のコントローラを開発し、独自のオペレーティングシステムを搭載し、生産設備毎にリレー(スイッチ)の塊で電気的に生産設備を制御し、コントローラで複数のリレー盤を統括する形で、複数の工程上連続する生産設備の制御を行っていました。
現在ではコントローラ+パソコン(or表示器)の構成が一般的となり、画面に情報が映し出され、画面をタッチすることで設備を動作させる形となりました。
コントローラは様々なメーカが汎用PLC(Programmable logic controller)として販売しており、リレー盤はなくなっていく方向にあります。
PLCは応答性、堅牢性を高めるためにオペレーティングシステムが搭載されないOSレスが主流ですが、EthernetやUSBなどで情報の通信は容易に可能となり、パソコンに情報を表示したり、蓄積したりすることも容易、価格も以前に比べるとはるかに安価、容易に入手することができるようになりました。
しかし、製造系システムのソフトウェアは、末端のアクチュエータやセンサの種類や数が設備毎に異なるため、部分的にパッケージ化されていても、「このパッケージを導入すれば事が足りる」というものはゼロに等しいです。
汎用品のハードウェアを選択しても、その製品の機能を上手く利用すればソフトウェアの開発量が下がることはありますが、基本的には、それぞれの現場に合わせ、それぞれソフトウェアを開発する必要があります。ここも、現在のOAとFAの性質の異なるところです。
OA、FA、それぞれの違いをなんとなくご理解いただけたと思います。
「オフコン」、「ダウンサイジング」、「プロコン」、「PLC」、「産業用パソコン」などをキーワードに少しインターネットを徘徊してみると、色々な情報が掲載されていて、その違いがもっと鮮明にご理解いただけると思いますので、ここでOA/FAそれぞれの「システム」について深堀するのはこの辺りに留めておきます。
次回は、事務系、製造系の「システム」に対応するのは、どういった人や組織、企業なのかを考察したいと思います。
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IoT事業部 マルオ
シナプスイノベーションIoT事業部のマルオです。
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