当たり前じゃない、1年がやってきた

まふゆのシナプス観察日記, 経験談・小話

年が明けて、服を捨てることにした。

クローゼットを買ったのは10年前。
10年かけて、服があふれた。
同じ年買ったカラーボックスが、いまや半分侵されている。
ほんとは常備薬とか洗面用品とか化粧品とかアクセサリーとかが、入る予定だったのに。

服という服ぜんぶ引っぱりだして、ベッドの上に並べた。
最後に着たときの記憶もないのが多すぎる。

しわくちゃのブラウス、何と合わせるんだかわからないTシャツ。
ウエストがきつすぎるパンツ、10年前同い年の女子がみんなして穿いていたスカート。

ごみ袋につっこむ。

ハタチのころ、服をたくさん持ち、さまざま着回しできるのが、よい女性の条件のひとつなんだと思っていた。
季節が移るたびなんとか自分を奮い立たせて買い物に行き、疲れた。

自分を奮い立たせるのにたいへん時間がかかり、夏物は夏の終わり、冬物は冬の終わりに買った。季節はずれの服は収納の奥に押しこまれた。

2020年は、外に出られない年だった。

月に1、2度、オフィスで働く日は、できるだけわくわくする服を着ることにした。
3回目あたり、いつも同じストライプのワンピースを着ていることに気づいた。

週に1、2度、スーパーに行くときは、いちばん肌ざわりがいいシャツを着た。
3ヶ月に1度、髪を切りに行くときは、いちばんシルエットがかわいいスカートを穿いた。

生活のための最小限の外出でも、すきな服を着たらそれなりだとわかった。
すきな服なんて、わたしにはそう何着もないこともわかった。

いつものワンピースは、クローゼットのいちばんいいところへ。
布の山は、感謝をこめてごみ袋へ。

11月、12月、表はどんどん寒くなり、事態はずぶずぶ深刻さを増した。
友だちと顔をあわせる話は出なくて、ちょっとだけネット通話して、家で過ごした。
予定がないものだから掃除が進んだ。排水溝。換気扇。
勢いのまま服を捨てることにした。

母の編んだ、高校のときのマフラーは、「思い出」入れの箱へ。
それなりの場でなきゃ着ようがないレースのドレスは、カバーをしてクローゼットへ。

いらないものは捨てていくけれど、着ない服がいらないものとは限らない。
ムダをけずれと求められるいま、何がムダかは自分で決めたい。
ぜい肉だと思ったものが、実は心臓だったりもするから。

思いがけない1年だった、でもわたしには次の1年がきた。

親から買い与えられた服を着ていたころ、思いがけないことなんて、わたしの人生には起きないと思っていた。
普通の生活が普通に続いて、普通に終わるんだと思っていた。

でも今は、普通なんてあっという間に変わることを知っている。
思いがけないことが、あっという間にあたりまえになることも知っている。

今日は何人、今日は何人。膨らんでいく数字はぜんぶ、どこかでいま暮らしている人。
明日はわたしも、どうしているかわからない。
わからないけど今日料理する、掃除する、仕事する。学んで、考えて、生活を作っていく。

いらない服を袋に詰めた。40リットル入り3つ。
いる服をクローゼットに収めた。寝室に1つ。

あすの朝ごみを出しにいく。徒歩1分をマスクして。

・・・

予定がない分、年末は料理もはかどりました。
お正月料理は、負担になるほど作らない、らしさにこだわりすぎない、バランスをおろそかにしない、をモットーに楽しみました。

わたしが生活する町もじき、2度目の緊急事態宣言の対象区域へ追加になるようです。
祖母が住む町は、ひさしぶりの大雪に見舞われました。
明日もしっかりと暮らしていきたいと思います。

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この記事を書いた人

まふゆさん

“まふゆさん”の中の人。
大阪オフィスの管理部門でこつこつ働きつつ、
ときどき社内ライター兼校閲ガールを務める。
本とお酒とNHK Eテレ「きょうの料理」が好き。

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