なんだか上手くいかないIoTの取組み(3)
シナプスイノベーション IoT事業部のマルオです。
前回のブログ「なんだか上手くいかないIoTの取組み(2)」では、製造業の「IoT」が上手くいかないのはなぜかをテーマに、「IoT」が、それぞれ異なる道を歩んできた「OA」と「FA」という2つの「システム」を繋いで「共同生活」させる、そもそも難しいものだからではないか? と考察しました。
第3回となる今回は、OA/FAそれぞれのコンピュータシステムを取り囲む人や組織に着目して、考察を深めたいと思います。
OAを取り囲む人々:情報システム部門
以前は、世の中の仕事は、紙・電話・FAXでまわっていました。
しかし、OA化が進むにつれ、紙の書類は各種ソフトウェアに、電話・FAXはメールに取って代わられ、パソコン・ネットワーク・サーバ・ソフトウェアは、会社にとって、電気・ガス・水道と同じように、仕事をする上でなくてはならないものとなりました。
今回のブログでは、こうしたいわば「仕事のインフラ」のうち、事務処理を進めるためのパソコン・ネットワーク・サーバ・ソフトウェアなどを「情報システム」と呼びます。
会社にいれば、「情報システム」を、いつでも、だれでも、安心、安全、便利に使えて当然と考えられていると思います。
「情報システム」を当たり前のように使えるようにするために、どこの会社も、「情報システム」を管理する部門を設けており、「情報システム」を当たり前に使えるようにしてくれる人々を配置しています。今回のブログでは、この人々を「情報システム部門」と呼びます。
会社によって、諸々の事情で、「部門」として設けずに、パソコン・ネットワーク・サーバ・ソフトウェアに詳しい人を「担当」としている場合もありますが、部門でなくても、今回のブログの中では「情報システム部門」と呼ばせていただきます。
多くの「情報システム部門」では、社内の「情報システム」の保守・運用や、社内から上がる「情報システム」に関する困り事を引き受け、解決していくことが、仕事の大半を占めていると思います。
この「困り事」には、ただ単にパソコンやソフトウェアの操作方法を伝えるだけで解決するものから、「情報システム」の一部を変更してより良くしなければならない、小手先で解決できないことまであると思います。
「情報システム部門」は、どうすればこの小手先ではいかないことを解決して、利用者にストレスをかけることなく、迅速に事務処理を済ますことができる「情報システム」を提供できるのか、いつも考えている人々です。
どのようなネットワークを構築して、どのようなソリューション/パッケージを、どのようなパソコン/サーバ上で提供すればいいのか、ソフトウェア/ハードウェアの両面から検討しています。
「情報システム部門」は、「情報システム」を構成するソフトウェア/ハードウェアと会社の事務処理とに精通しているエキスパートだと思います。
エキスパートがいるからこそ、会社では、快適で安全な「情報システム」が利用できているはずです。
エキスパートは、一瞬で育つわけではありません。
「情報システム」に関する情報は、市場に溢れています。この膨大な情報の中から必要な情報を見つけ出し、自社の「情報システム」へ的確に適用/運用するという業務に何年も従事してはじめてエキスパートとして成り立つわけで、「情報システム部門」の人々は、「情報システム」に専門特化した知識を高めるために膨大な時間を費やしているはずです。
また、「情報システム」は会社経営に直結する情報を扱うことが多いため、こうした情報の扱いにも長けていることも求められます。
「情報システム部門」は、長い時間をかけてこうした知識の構築に努める反面、自社が製造する製品自体のこと、製造方法のこと、製造に使う設備のことなど、製造現場に強くなるための取組みは薄くなってしまうため、経営的な指標を追求するための取組みと、製造現場のモノ=設備、コト=作業とをつなぎ合わせるのは、あまり得意でない状況になってしまっていることが多いと思われます。
FAを取り囲む人々:製造システム部門
よほどのこだわりの逸品的な製品でない限り、市場に流通している食品、電化製品、日用品等々の多くの製品は、手作業だけで作り出されているわけではなく、何らかの装置と手作業を組み合わせる、自動+手動の製造工程によって作り出されているはずです。
中には、装置から装置へ材料を移動させることも人手に頼らず、コンベア/ロボット/無人搬送機といった自動搬送設備と、製造装置と搬送装置を統合的に制御するソフトウェアを導入して、自動化/省人化を実現している現場も増えていると感じています。
今回のブログでは、「設備+人」で構成される、製品を製造するための仕組み全体を「製造システム」と呼びます。
「製造システム」が傷んでしまったら、すぐに改修しなければ、生産性や品質が劣化したり、最悪の場合は製造できない状況になったりと、会社が傾きかねないことになりますので、「製造システム」の点検/改修は重要かつ常に発生する作業です。
また、製造現場では、常に改善が行われています。改善活動には、人の動作や設備の使い方を変更することだけでなく、設備を追加したり、改造したりといったことも含まれています。
「製造システム」がいつでも滞りなく機能するように、多くの製造業では、「製造システム」を常に良好な状態に保ったり、より良くしたりすることを目的とした部門、あるいは担当者を設けているはずです。今回のブログでは、この人々を「製造システム部門」と呼びます。
「製造システム部門」では、「製造システム」の点検/改修/復旧と、「製造システム」の稼働中に発生する様々な問題や製造現場の人々からの困り事を引き受け解決していくことが、日々の仕事の大半を占めていると思います。
この「困り事」には、製造の仕方、「製造システム」の変更を検討しなければ解決できないような、その場しのぎの改修や復旧で済ませることができない、根の深いものも多々あると思います。
そういった日常業務に加え、これまでと違った製品を製造する場合には、「製造システム」を新たに構築する必要もあります。
「製造システム部門」は、どうすれば、製造現場の人々にストレスをかけることなく、生産性や品質を向上させて、正確に、予定通りに製品を製造することができるのか、いつも考えている人々です。
どのような製造方法を選択し、どのような設備やソフトウェアを、どのような設定で使えるようにして「製造システム」として提供すれば、製造現場がよりよくなるのか、方法/設備/ソフトウェアのすべての面から検討しています。
「製造システム」を構成するソフトウェア/ハードウェアと、製造している製品自体、その会社における製造の在り方全てに精通しているエキスパートだと思います。
エキスパートがいるからこそ、会社は「製造システム」で製品を滞りなく製造できているはずです。
「製造システム部門」のエキスパートになるためには、まず、機械工学、電気工学、生産工学、制御工学といった工学的な基礎知識が最低限必要でしょう。
これに加え、製品自体に対する材料工学的な事柄と、その現場の製造方法についての知識も持っている必要があると思われます。
このような人材は右から左に生まれてくるわけはなく、膨大な時間をかけて製造現場で働きながら育っていくものだと思います。
また、「製造システム」においては機械設備、電気設備、設備制御(ソフトウェア)が生産性、品質に対して非常に重要な要因となるため、FA商社や設備メーカから常に最新の技術・製品の情報を収集し、製造現場を改善するために上手く活かすことができることも求められるでしょう。
「情報システム部門」の人々が「情報システム」に強くなるためにそうするのと同様に、「製造システム部門」の人々は、「製造システム」に強くなるための取組みに多くの時間を注ぎますが、その反面、会社経営の根幹に関わる会計的なことや、事務処理的なことに強くなるための取組みは薄くなってしまうため、製造現場をよりよくするための取組みと会社経営に関係する指標とをつなぎ合わせるのは、あまり得意でない状況になってしまっていることが多いと思われます。
OA、FAどちらも全く違ったスキルが必要とされる
OAを取り囲む人々、FAを取り囲む人々は、それぞれ目的や形などは違えども、「コンピュータシステム」という大きな意味では同じものに関わっていているということ、しかし、世の中のモノづくりが高度になればなるほど、それぞれまったく違ったミッションの下、まったく違ったスキルが必要とされ、同じ会社に居ながら、まったく違った視点を持つ人が育っていくことをご理解いただけたと思います。
イメージがイマイチ付かないという方は、ISA-95という規格で「コンピュータシステム」を中心にした構図を単純なピラミッド型の図形で表現してくれていますので、そちらをネット検索してみてもらえれば、よりご理解いただけるかと思います。
このブログのテーマである「IoT」は、製造業にとっては、OA/FAをシームレスに繋いで便利に使おうというものだと思います。
ところで、前回、今回とまだ1度もクラウドという「黒船」のこと取り上げていませんが、「IoT」と言えばクラウドですよね。
OAは一部クラウド化されている会社もあると思いますが、FAがクラウド化されているという話は、まだ、あまり聞こえてこないように思います。
私としては、クラウドは前述のISA-95のピラミッド型の図形のてっぺんにあるのではなく、OA/FAとは別次元、つまりはピラミッドの一部ではなく外にある、また違った知識、スキルが必要になる分野だと捉えています。
となると、OA/FAだけならまだしも、クラウドが絡んでくると、またややこしいことになってしまいそうですよね。
次回は、製造業に存在する異なる文化を持った2つのコンピュータシステムと、それに携わる異なった視点を持つ方々が、どう「IoT」に取組めば、成功を手繰り寄せることができるのか、クラウドという「黒船」を絡めて、私なりの結論を記載したいと思います。
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IoT事業部 マルオ
シナプスイノベーションIoT事業部のマルオです。
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